LSC69「ふるさとゆかりの作家たち」第2回を実施しました。 [更新日:2025年11月17日] 日 時 令和7年11月12日(水)13:30~15:30 会 場 高岡地区センター学習室 内 容 藤子・F・不二雄の世界-短編SFを中心に- 講 師 富山高等専門学校 准教授 近藤 周吾 氏 【講座の概要】 Ⅰ はじめに「あ、そういう見方もあるのか」 藤子・F・不二雄(藤本弘)1933~1996 ・SF作品に設定されている未来は、彼が生まれて100年後の2033年となっているが、それも間近に迫ってきた。 ・『親子とりかえばや』では、子どもからの視点と親からの視点の両方を織り交ぜながら物語を進めている。つまり、少し視点を変えると新しい発見があるということを表現するのが上手い作家だったのではないかと思う。 ・1970年に『ドラえもん』の連載を開始しているが、これとSF作品が並行して進んでいるのが興味深い。Ⅱ 藤子・F・不二雄SF短編の魅力 ・そもそも彼の物語を創る才能、努力は只者ではなく、文学作品として評価できるものである。 ・年齢を重ね、また時代を経て理解が深まるものであり、多くの人に影響を与えている。 ・彼にとってSFは日常に軸足を置いたまま少し視点をずらした、「少し不思議な物語」のSとFである。 ・源氏鶏太も富山県出身であるが、どちらもユーモアとペーソスを兼ね備えている点が共通している。Ⅲ SF短編を読みなおす~ドラマSeason1を中心に ・『定年退食』、『メフィスト惨歌』、『流血鬼』など言葉遊びが多く見られるが、これが「少し不思議」の原点で、そこから新しいものを創っていっている。 ・特に『流血鬼』はエンディングがすばらしく、コロナ禍を経たからこそ腑に落ちる面がある。Ⅳ SF短編を読みなおす~『ミノタウロスの皿』と『ノスタル爺』 ・『ミノタウロスの皿』はSF作品の第1作で、ドラえもんと並行して描かれている。 ・編集者の依頼を受けて描き始めたのだが、子どもの頃から愛読していたSFの作家として認められた喜びを感じていた。 ・『ノスタル爺』は、民話(浦島太郎)とギリシャ神話に社会事象(帰還兵、ダム建設による水没集落)と、いろんな網の目を織りなしてできており、最後の「落ち」と音楽を含めてノスタルジア文芸の最高傑作ではないかと思っている。Ⅴ 藤子・F・不二雄の可能性 ・未来から物事を見る視点は重要だが、過去形しか持たない日本語を母語とする日本人はそれが苦手で、意識して現在形、未来形を持っていなければいけない。SFには、過去、現在、未来が描かれている。 ・日本人は過去の栄光にとらわれており、長い近代は、後期成長期の前期とそれ以降の後期に分けて考えるべきだが、藤子・F・不二雄はその両方を持っている。ドラえもんとSFを行き来することが後期近代のなすべき仕事だと考えている。 【受講者の感想】 ・丁寧に話していただき、楽しくわかりやすかったです。先生の解説最高。 ・藤子・F・不二雄作品のSFマンガに対して、近藤先生の奥深く研究された各作品のお話はとても面白く、聴き入りました。私も遠い昔にテレビに見入っていたことを思い出していました。 ・少し(S)不思議な(F)世界、短編であるからこそ印象深く読み取れるのではないでしょうか。今まで避けてきた分野ですが、トライしてみようかと思いました。 ・少し見方を変えたら少し不思議な物語-なるほどなと思った。 ・先日、高岡市の「市民大学講座」で、昭和の頃の地図を使って藤子不二雄ゆかりの地を歩いてきました。本日の講座でSF短編の魅力についてお話を伺い、大変勉強になりました。 ・お話、おもしろかったです。短編SFはまだ読んでいないので、ぜひ読んでみたいと思います。 【次回のお知らせ】 日 時 令和7年11月26日(水)13:30~15:30 会 場 高岡地区センター学習室 内 容 ラフカディオ・ハーンの作品における女の子 講 師 富山大学学術研究部人文科学系 教授 中島 淑恵 氏 お問い合わせ先 高岡地区センター 〒933-0023 高岡市末広町1-7 ウイング・ウイング高岡7F 電話番号:0766-22-5787 FAX番号:0766-22-5872