LSC69「ふるさとゆかりの作家たち」第1回を実施しました。 [更新日:2025年10月16日] 日 時 令和7年10月8日(水)13:30~15:30 会 場 高岡地区センター学習室 内 容 久世光彦の作品における空襲と 終戦の日の青い空 講 師 高志の国文学館 学芸員 大橋 加代子 氏 【講座の概要】 テレビドラマ界の巨匠であり、作家としても名高い久世光彦の作品世界を形作った、「終戦の日の青い空」という原風景に焦点を当て、久世本人の作品だけでなく、阿久悠、井上ひさし等の作品や映画「少年時代」等からも考察し、その人間主義の根源を探った。〇原風景としての富山大空襲 久世の創作の核となるのは、多感な10歳の夏に疎開先の富山で体験した富山大空襲の記憶だ。資料によると、彼は焦土と化した富山市街の上に広がる空を、のちに「神話の世界のような美しいもの」と記している。しかし、その青は単なる美しさではなく、喪失、空虚さ、不安といった複雑な感情をはらむ「青すぎるくらい青い空」として、少年の心に深く刻み込まれた。この衝撃的な光景が、久世の生涯にわたる原風景となり、久世作品に流れる「人間への温かいまなざし」すなわち久世光彦の人間主義を育んだ根源であるといえる。〇久世作品にあること 久世は受け取り方によっては嫌悪感すら覚えるような書き方をすることで、あんな不幸なことはあってはならないという当然のことだけでなく、人間にはいろんな面がありいろんなことを考えるもので、そうした人間たちがあの8月2日(富山大空襲)にも8月15日(終戦の日)にも生きていたということを伝えようとしていると思う。 60年余り続いた昭和の中に、「終戦の日」というあっけらかんとした空白が一日あり、その前後で、日本が大きく変わったと考えていたと思われる。そういう一日が日本の歴史の中にあることを忘れないようにと書き続けた人である。 そして、あの日を、日本人だけでなく、日本にいた全ての様々な人が体験したということも忘れてはならない。 【受講者の感想】 ・戦後80年、「戦争を知らない子供たち」ですが、「8月15日」の空を通しての様々な見解に触れ、改めて、あの戦争は日本にとって何だったのかと思いました。 ・私は9人兄弟の三男坊で、終戦時は4歳でした。物資がない中で貧乏な家だったので、近所の悪ガキ連中と墓地の供え物や畑のトマトやキュウリなどを盗み食いしたことが思い出されました。悪い思い出ばかりなので、今でも娘や孫たちにもあまり話したことはありません。しかし、今日の先生の講義は、私の気持ちを明るくしてくださったような気がします。ありがとうございました。 ・今までの作家の話とは違った観点からの話がおもしろかったです。 ・いろいろな人の文章を深く読み解き、本質に触れて解説していただき、感服しました。種々の文を読んで、自分なりに理解することが必要かと感じ、久世光彦の作品を改めて読んでみたいと思いました。 【次回のお知らせ】 日 時 令和7年11月12日(水)13:30~15:30 会 場 高岡地区センター学習室 内 容 藤子・F・不二雄の世界 -短編SFを中心に- 講 師 富山高等専門学校 准教授 近藤 周吾 氏 お問い合わせ先 高岡地区センター 〒933-0023 高岡市末広町1-7 ウイング・ウイング高岡7F 電話番号:0766-22-5787 FAX番号:0766-22-5872